185230日分の思い出はきっと忘れてしまったから、185230日分の思い出を作ろう。

昨日、ピアノレッスンの帰りによく行く店でハンバーグランチを食べていた。いつもならドリンクにアメリカンコーヒーを頼んでしまうのだが、グレープフルーツジュースを頼み、待っていた。すると、「すいません。今切れてしまって。」と言われて、仕方なくオレンジジュースにした。食事が出て来るのを待っていると、隣に一人のご婦人が入って来た。メニューを見てすぐにハンバーグランチを頼む。そしてオレンジジュース。おお、一緒だ。結構この店はご婦人の年代だと生姜焼きみたいなメニューを頼む人が多い。何だ、今日はハンバーグなんだな。食べたい物がたまたま重なる時ってあるもんだ。私もハンバーグが食べたくてこの店に来た。ふううん。

食べている最中、反対隣にいたおしゃべりな常連らしきご婦人二人が帰り、新しくまたお客さんが一人入って来た。また今度は白の大きなフリルの「衣装」みたいな格好をしたご婦人。スマホを片手に仕事の話をしているようだ。ハンバーグランチを頼む。飲み物はアイスティーだ。なんのことはない。みんな好みはそれぞれだ。食事の遅い私がハンバーグをずっと食べている。その横で新しく来た2人がハンバーグを頼んで食べている。3人が並んで同じ方向を向いて、同じ物を食べている。何だか不思議で滑稽だった。まぁ、こんなこともあるよな。

やっと食べ終わったときに、今日は早く食べられたな~と思っていたら、一番先に食べ終わっているはずの私よりも先に、お隣のご婦人がすでに食べ終わっていて、店を出るために席を立つタイミングだった。机の上に置かれた勘定のバインダーを探している。机の真ん中にあるが、黒いバインダーが裏返しで置かれているため、机の深いこげ茶色と混じって見えにくい。ヘルプマークが肩掛けのカバン辺りから揺れていたのが目に入る。もしかしたら気が付かないかもしれない。声をかけようかと思ったときには気が付いて、ご婦人はそのままお会計をして出て行った。

私は食事が終わった後のしるしるタイムに入っていた。ここのランチはお水、セットドリンク、お味噌汁、緑茶が出て来るのだ。いつも水分でお腹がしるしるになる。世の中の食事時間とは合わないが、結構早く自分では食事を終えたので、ゆっくり緑茶を飲んでいた。暫くして「そのかばんはお客様のものですか?」とひとつ隣のテーブルの常連さんにお店の人が声をかけている。違うよ、私のじゃないと言っていたので見てみると、壁際沿いにある作り付けのベンチに横並びで座っていたのだが、私の隣のテーブル前の席に黒いリュックが置いてある。見た感じ、重そう。さっきのご婦人が忘れていってしまったようだ。

全然気が付かなったなぁ。戻って来るかしら?とお店の人がリュックを手に持ち、店の奥に戻って行った。気を取られていた物が違うものだと目に入らない。あのとき気が付けばなぁ。まぁ、無理だった。ご婦人もきっと、重そうなリュックに無意識に別れを告げ、急に重くなったお腹だけを抱えて腕や背中は軽やかに、気持ち良く帰って行ったのではないかと思う。いつ思い出すのだろう。私はいつかきっと、ふと思い出す。他愛も無い日常だ。

では今日はこのへんで。