真夏の日に満開の桜を想像した

アートの街に友人とぶらぶらランチに出かけた。最近はちょっと違う街並みも楽しみたくて、冒険している。ただ二人とも怖がりなので、あまりにも高級な大人の街や夜のお店が多い通りに行くのは避けている。時間帯が昼間なので、閉まっている店も多いところだったが、足を延ばしてみた。個人の小さな店やギャラリー、アトリエもちょこちょこある。以前アートを見に来たときにもらった町の地図を参考に歩いてみた。

前回来た時に入れなかったギャラリーとも何とも言えないイベントスペースがあったのだが、その中にキッチンがあった。そこに日替わりオーナーのお店が看板を出して営業していた。誰も入っていない。今まで土着のお店しか入ったことがなかったが、今日は友人とそこに入ってみた。友人は「変な食べ物出ないよね?」と心配そうにしていたが、ランチメニューは二つあって、どちらも海鮮がメイン。丼物を頼んで、お金を払い、だだっ広いスペースにある大きなテーブルの角に座った。席から川が見える。「良かったら蟹が安く手に入ったので蟹汁をつけてもいいですか」と声がかかった。アレルギーの有無を聞かれた。そのまま蟹汁にしてもらった。金額は変わらない。やったぁ蟹汁~。今日のこの店はそのときに手に入る海鮮物でメニューを決めて作っているようだ。蟹汁と漬け物が付いた海鮮丼。テーブルに持って来てくれた際に、並べられた海鮮を説明してくれた。久々にエンガワや貝類も食べた。量も多過ぎず少な過ぎず適量。のんびり話をしながら食べた。

食事し終わった頃に、数名お客さんが入って来て、他の奥の部屋をアトリエにしているアーティストの人も入って来た。時間がゆっくりしている。街をせかせか歩いて行く人が少ない。少し長めに一息ついて、さあ店を出るぞとなったときに店長が話しかけて来た。

「この近くに住んでるんだけれど、桜の咲き方が変わったんですよ。」と言う。ネオン街が減って、ファミリー層も住む人たちが増えて、桜並木のある川沿いにマンションが多く立ち並ぶようになって来た。すると川沿いに日陰が多くなった。そのせいじゃないかとオーナーは言っていた。昔は日差しを遮るものが少なくて、川沿いのどちらの桜も一度に満開となって、わーっと咲いて散る。期間も短かったが圧巻だったと。今はバラバラに咲くそうだ。あっちが咲き、こっちが咲く。だから、一度に咲かなくなって長く桜の景色が見られるのだ、と言っていた。

この街の新しい変化で活気付いたのは喜ばしい様子でもあったが、ちょっと寂しそうでもあった。近くでお店を開いていたが昨年閉店して、今はここで週一回オーナーをしながら他でアルバイトをしているが、またお店を開きたいとも話していた。街が活気づいて以前とはまた違った新しい街になって行く。「いつまでここでやっているかわからないけれど」と笑ってオーナーがドアを開けて見送ってくれた。いつか春にも来てみようかなぁ。街は生きものなんだなぁ。同じ場所にいても、見え方も見方も変わるのか。私らも冒険したくなってこの街に来ているくらいだからなぁ。変わって行くのだ。

では今日はこのへんで。