体が言うことを聞く

検査のおかげで口に入れる物のありがたみが増したようだ。毎食必ず食べたい物をひとつ、時間がかかっても作るようになっている。何でも経験してみるのはいいことなんだなと思う。病気で食欲が無いというのではなく、体が元気で意識もはっきりしているのに食べられない、という経験は自分の中では本当に嫌なことなのだ。その証拠に体が自分から買い物や料理に向けて動くことを進んでやっている気がする。自動運転までは行かないが、以前より動きたがる。買い物に行くのはあまり好きではない方だったが、怠け者ではなくなったようだ。食べたいなと思った物があったときは、その材料が一品足りなくてもちゃんと買いに行き、作る。食べる。後回しや先延ばしをしなくなった。

やはり口に入れるもの=体を作るものという意識がより働いている。先日ケーキ屋で話をしていたときに、子どもの頃自分でレシピを見ながらよく作ったスフレチーズケーキの話をしたせいで、久しぶりにどうしても作って食べたくなってしまった。クリームチーズを買わないと作れない。普段の買い物は適当だったが、今回は他の材料も含めちゃんと在庫を確認してから買い物に出た。

同じ味を作るなら、なるべく昔揃えたような材料を手に入れなくてはと思い、探す。店の中で種類が少なく、しかも昨今値段が上がり続けていたような。箱の表示を見ると、内容量が少ない。ひと箱の量が減り続けてなるべく値段を変えず、小分けになっているようだ。ひと箱では足りなかった。しかも、成分表示を見ると余計なものが入っている。今は添加物が入っていて固めているものが多いのか。その分安いけれど、食べたくない。というより、今の自分の手が安い値段の箱をどうしても受け付けない。うぐぐぐぅ。はっ。

結局値段が高い方を手に取った。もうだめだ。昔の味には戻れないな。何も入っていない、純粋?なクリームチーズ。純粋って変だよな。食べ物で、材料なのに。今持っている小銭で足りないなら仕方ないが、出来るだけ変な物は買わないで過ごせるなら過ごしていきたい。とは言え、ひと箱では足りなかったので、2箱買う。高い、高い。安い中華ランチが食べられる値段だ。今は中華ランチより、チーズケーキなのだ。

自宅に戻って昼ご飯を食べながら準備する。室温に戻しておくのだ。柔らかくしなくてはと思って、量を計るときに気が付く。すでにとても柔らかいのだ。添加物で固めていないからか、最初から柔らかで混ぜやすい。こんなに使いやすいものなのか。子どもの頃使っていたのはたぶん添加物が入っていたのだろう。確かにたまに安い物などを見つけて作っていたときには、ものすごく固くて混ぜるのに困った思いをしたものだ。ここには何も入っていない、混ぜやすいクリームチーズ。俄然、やる気が出て来て食事を早々に済ませて作り始めた。

子どもの頃にスフレチーズケーキを?!とケーキ屋の店主に驚かれたが、小学校低学年から取りかかっていたのが記憶にある。高学年になると、自宅学習のノートを提出しろと言われて、家庭科を勉強しているということでお菓子のレシピを書いて出していた(実際夜中に作って書いていた)。家にあるレシピ本を熟読して、とにかく失敗を重ねながらいろんなお菓子を度々作っていたものだ。

確かにスフレチーズケーキを作るのには手間が多かった。ワンボールで出来ないし、他のお菓子よりも確かにかなり気を遣って作っていたように思う。そのピリピリした空気が台所のテーブルに張り詰めていたためなのか、家ではそのケーキを作成するときに限って家族内で口論が勃発。出来上がったふわふわのチーズケーキが崩されるというような被害を被ることも度々あった。だからいつしか、このタイプのケーキをあまり作らなくなっていた。

そんな過去があるスフレチーズケーキ。急に思い出して自分で作ってみたが、卵、バター、レモンでさえも、こうして見てみると体にいいとされる材料を手に入れて作っていることに気が付く。植物飼料、グラスフェット、農薬無し。まあ、出来る限りというだけで最上級のいい物ではないが、気にしている自分がいることは確かだ。使う砂糖もいつもてん菜糖である。こだわっていたわけではないけれど、今となってはこだわりはあるのかもな。

ひとり暮らしなので、たとえピリピリしても何も起こらず、平和的に焼き上がった。おお、うまい。昔作ったときよりも、より美味しく出来ている気がする。ほんの少しだけれど、くどさがない。レモンの香りと共にバターの香りもしてくる。久しぶりに作ってみて、もしかしたら懐かしい「あの味」ではなくなってしまったのかもしれないが、新しいこの味でもいいなと思う。グレードアップしたぞ。食べていて思い浮かぶのは自分の検査で見た体の中。結局、何もなかったのだ。健康体。ああ、あの体のキレイな美しい色をグレードアップし続けて来たコレで作って来たんだな。身は長年食べている物で出来ている。これからまた、自分の体に正直に誠実に応えたい。ホイ、ごはんだ。

では今日はこのへんで。