若さを感じるいい大人とは

美術館でのアート鑑賞に家族と行く。途中で桜を見て過ごす。嵐が去った後なのに、それほど散っていない。晴れ間を楽しんでいたが日差しのない場所は空気が冷たい。春ってこういう季節かもしれないなあと思った。

何度も行く予定でフリーパスを買って入館した。今日一日で全部を見て回ることは出来ないか、出来たとしてもまた何度も見に来るのを予想していた。やはり少し回ってすぐにフラフラになる。全部は恐らく無理だ。言葉・文字が多いアートだったことと、映像が流されている時間が長かったことが原因だろう。それに戦争の様子を人が口先から作り出して表している音がずっと流れて耳に入って来る。刺激が多過ぎて、かなり疲れる。アート鑑賞は体力がいるものなのだ。素通り出来ることなんてないよな~。

なので、館外で手作り感のある大きなハンバーガーを食べてからという昼食を挟んで、また再開する。それでも2時間続けて見ていたらまた座り込んでお茶を飲む。もうだめだ。帰ろうとなる。まだ半分も回れていない。まだ見ていない展示部屋に入りたい気持ちもあったが、また他の日でも来れるパスを買ってあるのだから無理しないことだと諦めて帰ることにした。

一緒に出かけた家族とケーキを食べる。どうしても何かお腹に入れないとダメだ、とお気に入りの大きめのケーキがある店を目指して行ったら、たまたま並ばずに入ることが出来た。ここは紅茶も美味しい。ケーキがテーブルに来ると家族はものすごい速さで食べ終わった。もう一個食べてく?と聞いたら少し悩んでいたが、結局紅茶をすべて飲み終わったところでお腹が落ち着いたと言って、そのまま1個でやめて帰宅した。後から聞いたのだが、どうやら私の後ろでメニューを抱えた店員がずっと立ってウロウロしていたらしい。もう一個食べる?が聞こえていたのではないかと思われる。でもなかなか、あの時間帯で2つ食べるような人はいないだろう。そんな大きさのケーキではない。周りの人たちもそれぞれ少しずつ残していたのを帰りがけにちょうど目にしていて、もったいないなと思ったくらいだ。普通よく見かけるケーキより一回り大きいから、大抵は1個だろう。それでも店員が家族のケーキを食べる速さを目撃、そしてもう1個食べるか?のフレーズを聞いて、もしかしたらと思ったのかもしれないな~。

背後にずっと人に立たれていたことも気が付かず、私は暢気なもんだ。一人の生活を過ごしている普段なら、ものすごく気になってしまうのに、ここ暫くは背後なんて無関心無頓着である。家族と一緒にいると周りに無頓着で、さらにボケるのが常である。安心とボケはセットなのかもしれない。振り返ってみると、美術館に着くまでの間にもボケボケだった。コートと一緒に持ち出して用意したミニタオルをどこかへ置き忘れていたらしく、使おうと思ったらリュックにもポケットにもないことが発覚した。実のところ、どこへしまったか全く記憶がない。完全に忘れたのである。他にもあった。トイレに向かうときには違う入口に差しかかってドアを開き、家族に止められてやっと気が付く。美術館の入口でチケットを買う際にも、割引のためのマイナンバーカードがなかなか出て来ない。代わりにと思い保険証を探すが出て来ない。結局マイナンバーカードを探そうと試み、再度探したら一緒に出て来た。なぜ一緒に入っていたのかすら覚えていない。もうすっかり「なんだっけ?」「どこだっけ?」「んー?」を朝から常にやっていたように思う。安心感は人を早くボケさせるから、緊張感は適度にある方がいいのだな。まだ、ボケたことを思い出せるボケ程度で安心する・・・いや、安心は禁物か。危ない危ない。緊張だ、緊張。

歩いている途中に木の実みたいなものが落ちていて、どうしても蹴りたくなる。蹴った。滑ったりしないかと思い、少し緊張。なぜかこういうときだけ体もスピーディーに動く。おお!まだ動けるぞ。玉乗りしない。やった~!と思っていたら、家族からひとこと「今どき中学生でもやっていないのに!!」と窘められた。ぎこちない体だけれどたぶんまだ動ける。無作法は体が若くないと出来ないもんだよなぁ。そうか、まだ若いんだな。聞いた人の言葉の全体の意味を忘れて、一部の言葉だけ聞いて都合よく記憶し、ずっと良からぬことしか考えていない。

窘められても、また相手が忘れた頃に家族に向けて横向きに蹴る。やった!歩いている足の間を抜けたぞ。しめしめ、気が付いていない。けれど、やられたことに気が付いていないこともつまらなくて自分から白状する。家族の方もまさかそんなことはしないだろうと思っていたのか、全くの無反応。それとも大人なのか。年齢は随分下のくせに大人になっちゃってさ、私より先に年を取るぞ~と思ったりする。

家族は「頭痛くなって来た」とか言っている。やっぱり何だか私より大人な感じがする。明日になったら、また何かやってしまおうと思ってウキウキしているところである。もちろん頭痛なんてないぞ。ふふふふ。

はたと気が付いたが、すでに若さで喜んでいるのだ。そのココロは、もう若くはないよな~。

では今日はこのへんで。