あと20文字でやめておけば、3000文字で済む長い一日だったのに。

本来なら昨日が図書館の本の返却日だった。いつものように朝の開館前に返却しようと思っていたが、いつまで経っても止まない風と雨で、どうしようかと思っていた。暴風のせいで朝のゴミ捨てに外へ行くのもままならず、逃げ帰って来ていたくらいだから、結局図書館の本を期限内に返しそびれてしまった。謝るしかない。仕方がないので明るくなるまで雨戸も開けず、本を読みつつ家族と過ごしていた。

急に何気なく雨戸を開ける。もう体が感じているのだ。風は止んだのだと。自分でも不思議に思ったが、雨戸を開けた後は風が強くは吹かず、雨もたまにパラパラと降って来るだけで、日差しも出て来た。体は本当に正直だ。晴れた。

昨夜はあまりにも強い風圧で、寝ようと横になったのに眠れなかった。呼吸がしにくい。きっとそのせいだ。ぼやけている昨夜の寝入りばなの記憶。魚のように口をぱくぱくしている自分がいたように思う。酸素をくれ~と体が欲している感じ。音も聞こえる。空がごうごう唸っている。まだ夜になったばかりの時間帯に飛行機の音だと思っていた音は、恐らく空が唸っていたんだろう。同じような音が0時過ぎに寝床に入ったときも収まっていなかった。飛行機じゃないな、コレ。家は揺れないが雨戸を叩いている雨粒が四方から聞こえていた。自分はぱくぱく、雨風はばらんばらん、空はごおぅごおぅ。うるさい夜だったはずなのに、家族はスーッと静かに寝ていた。眠れる奴はすごいな~。

雨戸を開けた頃には、空気が吸いやすい、明るい、気分もさわやか。見えるものがキラキラだ。体も気力も正直だ。ちょうど親から面倒くさい連絡が入ったが、晴れたので用事に応じることにした。お金を銀行から引き出して家まで届けることになった。

気温が上がる。天気予報で言っていた通りで、急激な気温差。夏日。薄着で出たはずなのに暑過ぎて上着を脱ぐ。歩いている途中でフラフラしてくる。お腹が空いている。喉も乾く。なぜこんなに血糖値下がっているみたいになるんだろう?・・・げっ。昼に家族と話していて忘れていた。具沢山の味噌汁を食べ損ねていたことを思い出す。そりゃあ水分もないよな。野菜も食べ損ねているから早く消化してしまってお腹が空くのも仕方ないよな。

とにかく親にお金を届けてしまおう、と思ってある程度進んだところで、到着時間を電話するように言われたことを思い出した。だが、電話をした途端、最も大事なことを忘れていることに気が付いた。必死になり過ぎて、お金を引き出すのを忘れていたのだ。頭が回らないときは何かを忘れている。恐ろしい。私は一体何をしに家を出て必死に歩いているのだ。電話に出た親には到着する時間を伝えた後、来た道をまた必死に戻る。車が混んでいる道路を何とか渡り、踏切を超え、顔を見て目が合いつかまると面倒な政治家が演説しているところをやっと避けて来たというのに。やってしまった~。

何とかお金を届けた実家からの帰り道、お腹が空いてどうしようもない。さっきまであったはずの飴も残りがない。今日に限ってなぜか水筒まで忘れて来ている。クラクラしながらでもどこに行ったら自分がちょうどよい食べ物にありつけるだろうか。家まではちょっとモタナイ。ゆっくり食べながら座りたい。

あっちに行き、こっちに行き。気になったところの店の前まで来ると「何か違う」とまた戻って、の繰り返し。判断力の低下かもしれない。ここまで来るとほとんど帰宅した方がいいかもしれない。そんなことを思って、最後の砦のように思っていたカフェへ向かう道を避けて家に向かおうとしたが、やっぱり家に帰るのは違うと思って戻る。行きつ戻りつ結局はカフェへ向かった。

結構無駄な道のりを歩いていたと思う。絶対遠回りしている。疲れ果てているのに、カフェの前まで来ると、やっているときに出している目印の立て看板が出ていない。電気はついている。開いているはず、と思って階段を上ると、開いていた。やっと辿り着いた!「どうぞ~」と店主が顔を出して来て、誰もいない店の奥に進んだ。

今日は強風で立て看板を出していなかっただけだ。ほっとする。「今日はお茶だけですか?」と言われて、食事したいことを伝えると、日替わりメニューの黒板を持って来た。普段ならメニューが書かれたメモがたくさん貼り付けてあるはずだが、今日に限って少ししか無い。もしかすると悪天候で客足が少ないと予想して、前もってメニューを減らしていたのかもな~。軽く食べられそうな物を探したらBLTサンドがあった。コーヒーも飲みたい。値段も手頃だ。早速注文した。やったぞ、これで安泰だ。

そう思ったのも束の間、今日はなかなか出て来ない。やっと来たのはコーヒー。食事と一緒に出していいかと言われたからいいよと言っていたのにコーヒーだけ。まあいいか。店主ひとりだもんな。何かやることが多い日なのだろう。砂時計の砂が落ちたら飲み頃です、サンドは今作っているのでお待ちくださいね~と言って去っていった。

フレンチプレスというタイプのコーヒー、自分でカップに入れるのである。砂時計の砂が早く落ちないかなぁと思って待つ。毎回違うカップ。今日はサーバーのコーヒーが全部入りそうな大きめのカップだった。サーバーに残すと濃くなって苦くなるからなぁ、と思ってカップの取っ手が目に入った。何やら汚れているような。普段なら気になることがないので、たまたまコーヒー等がちょっと垂れたのかもしれない。

でも気にして飲むよりはと思い声をかけたら、申し訳ないと言ってすぐにカップを替えてくれた。だが、すでに砂時計の砂は落ちてコーヒーは濃くなっている。しかもカップは同じデザインでありながら、小さめサイズ。もう今日は濃い苦めのコーヒーにしかありつけないことをそのとき知る。

それでもコーヒーは飲めるのだ。やった。次はサンド~と思っていたら、店主が来る。「今日はごめんなさい。レタスが終わっちゃってて、無いんです。代わりにキャベツで作ってもいいですか?」とのこと。早く食べたい。だから当然何でもいいからと思って「イイ」と言ってしまった。食べやすくは作ってくれるはずだ。どんなふうかな?刻んだりするのだろうか。

「お待たせしました~。BLTサンドです。」店主が持って来たのは見かけはほとんど普通のBLTサンド。ホンマかいな。見てびっくりした。刻まれていたのは隣の器に入ったサラダのキャベツの方で、サンドのキャベツは葉っぱの形状がたくさん重なってトマトとハムのようなものと一緒に入っている。果たして私はかぶりつくことが出来るのだろうか。(次回へつづく)

なんて書いて、終わらせてもいいかと思ってしまうくらい、気分的には長い一日だったのだ。文章が長くなって、文字をこれ以上見るのは自他ともにお腹一杯だろう。結末を言うと、あのサンドは思い切ってかぶりつくと、「なんだ全然イケる」と思った。嚙み切れない心配はあったが大丈夫だった。むしろ斬新なメニューだなと思って最後まで美味しく食べた。キャベツ斬新だね、焼肉サンドにしたらさらに食べ応えがあるね~等と告げて、店主のカフェ巡りの話や他で出会った好きなサンド等の話で盛り上がった。最後にレタスがキャベツになってしまいメニュー通りじゃなかったから、と店主にお代も割引してもらえたという顛末。ブログにも書けてしまう何というお得な体験。ありがたい日々である。

では今日はこのへんで。