ねぇ、あなたはここに来たい?

朝からクッキーを焼いた。この間出かける前に仕込んでおいたので、生地を伸ばして型抜きをして焼くだけ。いつもと違い、型抜きをサボらずに焼いてみたのだ。しかも暫く使わなかったレシピだから、味を覚えていない。型抜きは大丈夫だったが、生地を先に伸ばして一度冷凍室で休ませてから型を抜く、という手順を間違えてしまった。が、あまり違いもないだろうと思ってそのまま焼いた。出来上がりはビスケットのような感じだった。けれど、時間が少し経つとクッキーらしい食感になって来た。それほどまずい、というわけでもないけれど、思っていた食感と違っていた。きっと想像していたのは他のレシピのクッキーだ。畑を作っている人から採れたてのグリンピースをもらったので、そのお返しをクッキーでしようと思っていたが、これではだめだ。やっぱり違うレシピにしよう。

今回焼いたクッキーはすべて自分の食べるためだけのものとなる。2回目に焼いたクッキーは、本を読んでいて時間と焼き加減を見るのを忘れてしまい、「焦がす」という結末を迎えている。クッキーは焼き上げのタイミングが大事だ。それでもまずくはない。まずくはないが、失敗をしている。

こんなとき、家族がいたらな~とか、学生でクラスメイトがいたらな~とか思う。家族がいたら「食べていいのぅ?」と出来たそばから勝手に食べていることが多いし、失敗しても基本お腹に入るものなら何でも食べてくれるから、作って失敗しても無駄にならない。学生のときのクラスメイトは作ったクッキーを友人に持って行くと、そのそばに「くれーくれー」と言いながら鳩のようにみんな群がってあっという間に無くなったものだ。味はどうでも良かったのか、単にいつもお腹が空いている年頃だからか。出したものは食べる、みたいなことが行われて、失敗作も消費の対象になっていたから、こちらは何度でも試すことが出来たものだ。最近はひとりだから、そうもいかない。必要な分だけ焼くことが出来るようなアイスボックスクッキーならいいが、生地を冷蔵から戻す割合を忘れてひとつの塊りで仕込んでしまった今回はその段階から失敗をしていた。すべて焼く羽目になってしまったのだ。ううぅ、しかも焦げが・・・である。

最初の段階で失敗していたんだと気が付く。そもそもこのレシピが思っていたものかどうかをちゃんと確認していない。それなのにレシピを見ながら作り始めてしまった。加えて焼き上げの仕方も気を抜いていた。失敗はやり始めから決まっていたことなのかもしれない。料理は適当で何とかなるが、お菓子は材料をちゃんとそろえるところですでに出来上がりが決まっているようなものだ。適当ではなく、ちゃんとやらないとなぁ。思い描いていたレシピはクルミが入っているにも関わらず、クルミを用意していないってどういうことだ?初めから失敗レシピを選択しているなぁ。少々適当が過ぎた。入れてもいないものが出来上がったときに入っているクッキーなど作れるはずがない。何をやっているんだか。

何をやっているんだ、ということで思い出したが、今日は地域食堂開設2回目ということで昼ご飯代わりに食べに行った。作成担当じゃない月だったので、他の人たちがどんなふうにやっているか、どんな人が入っているか、雰囲気はどうだろう?とかを見に行く。食べるだけ、ではあるのだが、顔見知りがいないところに入るというのは結構勇気がいるもんだよなぁ・・・と思いながら入口を覗く。子ども連れのファミリーがいる。その他は関係者かもなぁ。

席は割と一杯になっていた。相席になりそうだ。それはまあ平気。だけれど、関係者じゃない人が急にフラッと入れるもんかねぇ。声かけてもらっても、ドキドキして通り過ぎちゃいそうだ。ひとりで地域のこういう場所に行き慣れている人じゃないと入りにくいだろうなぁと思った。じゃあそんな場所に入って来る人ってどんな人だろう。周りを見ていると興味を持たずにはいられない感じだ。たぶん、私のことを知らない人は私を見ている。見られるのは平気だが、これが関係者じゃない人なら気になる目線ではないだろうかとも思った。

メニューがカレーで定番である。値段が安いか高いかという判断もされるだろう。もちろん、美味しさというのも大事なポイントだ。そういう意味では先月より美味しいカレーであった。前回担当には悪いが今回のデザート付きカレーの方に軍配が上がる。デザートはプリンにホイップをして飾りつけていた。それだけでも見た目がいい。

どこかのおじいさまが一人入って来て、私と大テーブルの端と端で相席になった。カレーを食べ終わるとプリンを夢中で食べていたせいで、顎と鼻の下にホイップが付いている。「あの、顔にホイップがついてます」と声をかけた。「ああ、ありがとう。ははは。美味しくて夢中になっちゃって。」と言葉が返って来た。たったそれだけのことだが、ホイップ効果だと思った。一言だが話すきっかけが出来た。実は周りの同じテーブルに座っている人たちは何の会話もしない。身内同士で少し話すだけである。黙食?本来の目的としては、誰でもここに来て話をしたりしながら一緒にご飯を食べると楽しいよね・・・というものがある。なかなか急にここで話が出来るものではないよなぁ。目的達成は出来るんかいな~。

カレーを食べた後、全く知らないおじいさまと言葉を交わして、知っているスタッフと話をした後、時間があるなら子どもたちが遊ぶ2階を手伝ってと頼まれた。担当じゃないけれどなぁ。自分は今日はここで何をやっているんだか。どうせ見てみようと思っていたので行ってみた。建物が新しいのに階下に上の音がひどく響くらしく「静かに遊べ」と言われている。折り紙がテーブルに用意されていて、本や作られた折り紙作品が箱に入っていた。

男の子が折り紙で12面体を作っているので横に座る。友達から作り方を教えてもらったそうだ。私は「じゃあこれが出来上がったのを見たら自分はすぐ帰るね~。」と他のスタッフに言っていたが、結局長居している間に、同じテーブルに女の子とそのお母さん、男の子の兄、お父さんも来た。折り紙を介して、他愛無い会話をしながら過ごす。男の子が作っていた12面体作成は「ダメだ、忘れた。」と途中挫折の危険があったが、角をこうしたら?とか、思いつく予想を伝え、他の人が探して来た折り方指南の動画を見ながら作り終え、なんとか持ち堪えた。良かった。まずまずである。

折り紙を介して、来ていた親子共々会話をしながらのんびり過ごした。自分自身が土曜の午後、誰かとしゃべりながら温かいカレーを食べ、折り紙を見ているだけだが他愛ない会話をして、ぬくぬくした空間にいた気がする。私も地域のただのひとり暮らしの人間である。対象者はきっと自分か。スタッフとして関わるよりも、自分目線で考えて居心地のいい場所になって行くようにしてみよう。外側からの立場でお膳立てばかりに終始していてもきっとダメだな。一員として、自分も楽しいよ、と思えなくては。

ふと、スタッフもどき、みたいな自分はあの2階でどういうふうに見られていたのだろうかと思う。馴れ馴れしい大人がいる、と男の子にも思われただろう。そういうのは全然イイ。「楽しかった。来月もまた来ますね~。」と女の子のお母さんに言われた。ただの地域の人、ボランティアスタッフの人、どういう人として見られたのだろう。なんとなくスタッフ?として思われていたのだろうか。人と人との間に垣根のない町作り、をしているのは果たして誰だっけ?自分たち自身だよなぁ。

「この間も食べに来たんだって?えらいな~。」と今日のプリン作成担当のスタッフに言われた。それじゃダメだって。自分たちがここに来たくならなきゃ意味がないよ。ってなことで、まずは来月もカレーを食べ、ぬくぬく空間を楽しみに行ってみようと思う。美味しいカレーでありますように!

では今日はこのへんで。