山なんか登らない。そう思っているけれど、たまたま「山に登って生きて帰って来るためには」などという注意事項をネットで目にしたので、過去の山での事故の事例をいくつか最近見ていた。山に入ったら思いがけない急な悪天候に見舞われ、体調不良や心理的なパニックに陥りやすいものなのだ。過去の事例を見ていると低体温になって死んでしまうリスクはかなり高いことがわかる。そして単に疲労が出て来て判断力が鈍り、迷ってしまった恐怖からパニックに陥ることは簡単にある。そんなことを回避するために準備が肝心であるのだ。
そんなことを感じたにもかかわらず、昨日は電車で少し遠くまで乗って人と会った後、急に自宅まで歩いてみたくなり、3時間ほどの道のりを歩いて帰ってみようと思ってしまう。一緒にいた家族が持っているスマホの充電は満タン。地図や位置情報は明確である(はず)。距離12キロ程度。暑い気温ではあるが、食事を食べた後であるし、水筒のお茶もまだたっぷりあるから水分と栄養は確保してある。山の中ではないので、途中途中に店もあり、休憩出来る場所もある。行ってみよう・・・と歩き出した。
ところが、である。途中から廃墟のような古い建物が見える場所が続き、行き止まりの表示があちこちに増えて来た。人が通れそうな階段もあちこちにあるがその上には古い壊れた家屋が見える。たまにある道も私道で行き止まりのようだ。隣には車のみが通れる道。ただ自転車も通行不可。高速道路脇の道ならぬ道のようなものを、上がったり下がったりしたりする箇所に突入してしまった。夜間であれば灯りが乏しくなるであろう小さなトンネルがあり、その先には手入れのされていない雑草が高く生い茂っている。本当にこの先に道なんかあるのかねぇ。足元にはコンクリートで固められた道。行き場の無くなったであろうたくさんのミミズたちがカラカラになって転がっている。何百匹?ともう、数えられない。もしここで体調不良となり、うずくまり、転がっているミミズのように行き場が無くなって、誰も通らないような道で二人とも忘れ去られたら怖いなぁ。これが山であったのならば、心理的パニックに陥る状態の序盤である。山ではないけれどネ。
幸い、山とは違いスマホの電波は入るのだ。少々心細い道を進んでいると、背の高い雑草に取り囲まれた先の真ん前に柵が見えた。何か書いてある。「関係者以外立ち入り禁止」?この先に進めないのだろうか。道なき道を結構長い間歩いて来てしまった。戻ることを考えると途端に心的に負担がかかる。サンクコストバイアスである。山で陥りやすい心理状況だ。街中であるはずなのに何だか山登りの状況を思い浮かべていた。ダメだった場合は引き返すのが鉄則と言われている。そう思うのだけれど、歩いて疲れて来ていることもあって、戻りたいとは思わない。いやいや、ヤバイね。こんなふうにコンクリートが敷かれた安全な街中の道を歩いているはずなのに、ほんの少しの視界の不明瞭さに惑わされて、心的負担がかかっている。道に迷ったと思わなくても、判断材料が不足したり、心的負担が簡単に起きるんだなぁ。看板の近くまで近寄ってみた。先程は雑草に邪魔されて見えなかったが回り込むと道があるようだ。ふう、セーフ。道がまだ続いていた。
スマホに表示された道が現在正しいものであるのか、実際行ってみないとわからないこともある。間違いだったら、という気持ちが湧く。それに疲れて来て、元の道を戻りたくないという気持ちも増す。暫らくして「足がどうも痛くなって来た」と家族が言う。暑さもあって、段々と疲れが出て来た。余裕がないゾ。いつもよりも歩く速さがゆっくりである。初めての道で、視界が不明瞭で戸惑うのだ。歩みが尚更遅くなっている気がする。いつまでも「あと○○キロ」という表示が繰り返されているようで、同じように見えてしまう。何度見ても全然進んでいない。山歩き用の「ヤマップ」や「ココヘリ」等が必要だったんじゃないか?などと冗談とも本気ともつかないことを口に出す。疲れて来ると、判断力が落ちて来る。道の目印を探す自分の目も、見たいものを見てしまうもの。幻覚?だったら怖いよな。もしこれが山だったら、無きにしもあらずといったところだろう。簡単に思い込んで、迷ってしまうポイントなのだなと感じた。
たまたま山登りの注意事項を知っていたが、まさかその予行訓練のようになり、危険な兆候の実体験を味わうことになった。疲れたら休むこと、栄養補給をすること。ハイペースで歩かず、ペースが落ちた人に合わせて動いて、無理をしないこと。山を歩くのも知らない道を歩くのも似たようなものだ。注意して考えておけば間違いないな。実際、飲み物を持っていたのだが、ちょうど足りなくなりそうだった。人通りの少ない道なき道では自販機も見当たらなかったのだ。危なかったなぁ。喉が渇いてしまうことは予想出来たのに、食事のすぐ後だったので、余分には持ち歩いていなかった。慢心は危険だということなのだ。もし、水分が足りない状況に陥っていたら、判断力が下がったまま、それこそ先を急いでさらに道を迷ってしまったかもしれない。時計の時刻は夕暮れを差していた。山だったら遭難確定だな~。
今回はその後すぐに、店舗や住宅が見えるところまで辿り着いた。自販機も見つけて、すぐさま飲料水を確保。そこからは適宜、地図上で目星をつけた店の中で椅子に座って休憩取り、トイレにも行けた。あと1時間と数分程で自宅に着きそうな予想がつくと、安堵と共に元気な気力と足取りが戻って来た。大した距離じゃない、大した暑さじゃないと思いつつも、ちょっとしたことで追い込まれる状況になる。精神的なものはやはり大きいと思った。準備は大事だな。山登りじゃないけれど、これから本格的な夏だ。何か動くときは準備を万全に。憂い無しで行こう。いつも気ままにフラフラ歩く自分だけれど、この季節は要注意だと自覚した。
では今日はこのへんで。