話を聞いているだけなのに、受け取っている物が多過ぎる。

今日も少し電車に乗って、好きな街をぶらぶら。家族がよく行く中華屋さんへ初めて入る。円卓に相席で座ると、ご婦人が飲みながら一人食事をしていた。最近ではコロナの流行で透明の衝立で区切られている席が増えて、相席をする際にほんの少し気楽な距離となっている。ちょうど円卓に自分も入れて3組座っていたが、そのご婦人は円卓を半分に仕切られた場所の衝立寄りに座っていたが、ほとんど横並び。背中の後ろのテーブルの集団が帰って行くときに、そのご婦人が挨拶に立って席を外した。どうやら、この店のマダムのようである。

その直後、常連さんらしき人が同じ円卓の向かいの席に一人座った。店のスタッフが常連さんに「今日のおすすめ」を話している。自分たちが選んだものとは違い、どうやらランチセットの方が今日は豪華なものになっていたようだ。残念~。まぁ、今日は普段自分では食べない粥が美味しいと聞いていたので、チキンと粥を頼んでいた。美味しいので黙々と食べていた。

その常連さんが食事を終える頃に、突然マダムがこちらへ「杏仁豆腐食べない?」と聞いて来た。声をそばでかけられた家族が遠慮しているところにスタッフがすでにテーブルへ杏仁豆腐の皿を二つ並べる。常連さんが食べていたランチセットについていた物と同じものが来た。「美味しいから食べて行って」と言い、「以心伝心で伝わって来たの。」と食べたいでしょ~と自分たちに有無を言わさずグイグイ来る。勧められたのでそのままご馳走になる。

そこから常連さんも交えて、話が続く。頂いた杏仁豆腐のレシピ話から始まって、店の切れ者のスタッフや息子の話、店の前の看板人形の話も古い写真立てをどこからか持って来て見ながら説明を受ける。戦争中の家族の話も色々。長く続く人気の店であるから、話は尽きない。マダムが常連さんと自分たちに店の自慢のレトルト商品を帰りにお土産として持たせてくれた。気前が良過ぎるなぁ。儲けなんて考えていないのだろうか。すっかりご馳走になってしまった。

マダムが席を立った時に常連さんに聞いてみると、実は今まで店に通っているときにマダムと話したことは無く、今日が初めてだと言っていた。マダムは仕事を上がる予定で食事をして、飲んでいたお酒の力も加わって饒舌になっていたようだ。偶然に楽しい時間に参加させてもらってしまったなぁ。ごちそうさま、また来ますねと伝えて店を後にした。

どんな人気店でも、商売をしていたら大変な時期はあるものだなぁ。話を聞いていて、歴史が長くなればなるほど大変なことは降りかかって来るものなのだなと感じた。繁盛しているとはいえ、ずっと続けて行く間に辛いこともあるのだな。腹が立つことや悔やむこともあるのだ。相づちを打ってただただ聞くだけなのだが、辛かった等の身の上話を初対面だとしても聞いてしまう機会が自分は多くて、知らない世界を知る機会にもなっている。いろんな人がいるなぁ。自分が体験して来なかったことを目の前の人は体験している。すべての人の体験全部を自分が同じように体験出来るわけはないから、知ることが出来て、自分はとても恵まれているなぁ。自分に話せたことで、相手にも少しは役に立っていたらいいなぁと思う。

では今日はこのへんで。