ケーキが美味しいから続くのだ

ケーキ屋のスタッフがまた減ることになった。仲間と運動の帰りに閉店間際のケーキ屋に滑り込むと、店主がちょっとだけ浮かない顔をしている。何だろうなぁと思っていたら、「以前から話していた話だけれど・・・」とスタッフが来月には一人辞めることになったと話し出した。

そう言えば少し前にそんなことを聞いていた。休日にスタッフが必要な店だというのに、最近になって平日しか出たくないと言い出したスタッフであった。まだ若いし、家族と過ごす休日をお金と天秤にかけてみたら、その時間が惜しくなったのだろう。五月の連休を前にして、ついに辞めるということになったようだ。

店主が仕事については厳しかったりするけれど、他のことはかなり融通が利くことを自分も手伝いに入ってから知ったのだが、こちらからの要望に応えてくれることが多くて、優し過ぎるなぁと思ったくらいである。人はその気遣いや優しさに慣れて、これが常時普通のことのようになってしまうのだろう。最初の採用時の契約がスタッフの中で曖昧になり、要望がエスカレートしていたんじゃなかろうか。店主は随分シフトの要望に応えていたと思うのだが。それでも辞めたいのなら、まぁ仕方が無い。

人が抜けたことによって、その時間を埋めるために自分にももう少し長く出てもらうのは可能かと遠慮がちに言って来た。自分は休日中心にと言いながら、必ずしも土日両方に出ることはなく、今は元々いたスタッフの希望を中心にして、その空いた時間を埋めるような感じで出ている。長時間や連勤はつらいだの、朝は弱いだの、いろいろ自分も考慮してもらっている結果だ。今後は、少し働く時間が増えるかもしれない。好きな店に居られて、ほとんど好きなことをやってお金を得られるのだから、とてもありがたい話である。

店主の「無理なく長く勤めて欲しい」という願いは、自分が手伝いを始めてからそろそろ半年ほどになるけれど、本当だなぁと感じている。せっかく縁があったのだから・・・と、仕事がほとんど出来ないバイトの子もずっと辞めさせたりしないのだ。

店主の話では不器用で間違いが多く、材料がダメになってしまったこともあるし、会話がうまく成り立たないことも多いようである。けれど、店主がほんの少しの社会経験の場になるならと時給も払った上で、そのスタッフが出来る手伝いの場を作っているのだ。

小さな店だから、ほんの少しの材料費でも失えば大きな負担であるのに、力になれるのならと今も続けている。そういうふうにしてあげたいと思っても実際には出来ないことが多いのではないだろうか。すごいよなぁと思う。

自分も店主が誘ってくれたとは言え、店の負担にならないようにと今も努力は続けている。今のところ神経質に業務の確認作業をするところなんかも含めて喜ばれているところもある。ちゃんと予定の日に手伝いに行けるよう、健康管理を以前より気をつけるようになった。

それに、店でメモったことも、復習したり、ネットで調べ直したりと、当然と言えば当然のことであるが、苦じゃなく業務をしっかり覚えるようになった。店主は何か教える度に常にこちらからの質問を待っているので、あやふやにしないように念入りにメモを見返して疑問が無いかチェックを必ずして、質問をするようにしている。店主の時間を割いてもらっているので、その分きちんと応えたいなと思って過ごしている。

季節によってケーキも変わるし、新作も多い。覚えることは日々増えて追いつくということはないのかもしれないが、その都度努力して行くことも大切なのだろうと店にいて思えるようになった。時給も変わらないし、業務内容が変わらないでいてくれた方がラクなのだろうけれど、変化を受け入れて行くことに対して納得している自分がいる。変化が多いとお客としても面白みがあるし、飽きが来ない。いい店に常になっていると思う。

自分が入った時期が繁忙期だったので、店の業務を覚える順番が他の人とは違ったこともあって、もしかしたらメインの業務まで達していないのかもしれないが、そこそこスタッフとして必要なときに声をかけられる位には仕事が出来るようになっているのだなと思う。接客、会計、焼き菓子の封入作業、菓子の仕上げ等、少しは早く出来るようになって来た。他の人が週3で覚えている業務を週1でやっているから、ちょっと自分にはハードではあったが、店の運営がラクになるよう努力は続けて行きたい。

この店主が作る店がとても好きである。もちろん、ケーキも焼き菓子も。だからこそ出来るんだろうなぁ。もし店主が美味しいケーキを作らなくなったら・・・そこが自分の辞め時である。

では今日はこのへんで。