たぶん自分は、この店を丸ごと食べているのだ。

昨日がケーキ屋の手伝い初日。スタッフ用のドアから入ったはずなのに、なぜかもうすでに馴染みの場所だ。いつもの厨房、いつもの声。落ち着く。店の裏側というものは煩雑だったりすることがあるけれど、穏やかな空気が流れる雰囲気。まぁ、たまたまバースデイケーキの予約が少なくてお客さまの受け取りも終わっているという、忙しくない日に出勤したというのもあって、質問もしやすくて、知りたいことをすぐ聞ける状態だったのも大きい。電話が引っ切り無しにかかって来るとか、お客さまが立て続けに延々と来店するようなことはなく、今のところ忙しさはピークではないようだ。12月のクリスマスシーズンが恐らくとても忙しいはずだ。3月までいつも眠れないとボヤいていたことを思い出すと、これから忙しくなるまでの間に仕事を少しでも覚えて力にならないとなと思う。

今回のユニフォームだが、ベレー帽を被ることになり、自分でも笑ってしまう。店主に「被り慣れていないんだけど」と助言をお願いすると「OK。大丈夫。」と言われた。どう被っても給食帽に見える。なんだ、それでいいのか。パリのようにギャルソン風(?)のエプロン。今ってどこもこんな感じなのか。どこから見てもコスプレのように感じる。知り合いが店に来たらきっと笑うだろう。

とにかく店の販売の手伝いが出来るように、ケーキの販売の一連の流れを体験する。それに店主からの気が付いたことをまとめた連絡ノートを確認する。日々、店主が事細かに伝えることが増えているようだ。そういうものだろう。スタッフが少ないとはいえ、私も含めそれぞれ「人」である。人の数の分だけ間違いもあり、誤解もあり、感覚も違うので、店主が求めている習熟度や理解度も違う。常に更新してどう違うのか、どんなことに気をつけて欲しいのかを熱心に伝えて来る。なぜか全然嫌じゃない。それは多分、この店を自分が本当に気に入っているからだと思う。

ケーキが美味しい店に何度も通い、そこの店のお菓子に詳しくなり、常に挑戦や新しい試みもあって、変化もある味わいに何度驚いたことだろう。自分が好きなケーキを言わば食べていただけだが、だからこそ今更売り物であるケーキ類や焼き菓子を詳しく覚える必要もあまり無い。店がどんな雰囲気をお客さまに提供しようとしているか、言葉遣いやしぐさ、テンポとか間合いの取り方は、過ごして来て自分も馴染んでいるところもあって、説明されるよりもきっとわかりやすい気がしている。もちろん、お客さま目線ばかりでいてはわからないこともあるので、これからもっとこの店を深く知ることになりそうだ。

嫌だな~と思うことが無いのはありがたい。仕事をしていて「やり過ぎ」「みんなの仕事が増えるから」と気が付いたことを黙っていることが今までは多かったが、そういうことも店主は聞く耳を持ち、どうするか判断してくれるから、我慢をしなくて済むのはとても気楽だ。元々、自分の気に入っている店主が中心になって、この店は繁盛して回っているのだ。抗う必要は全くない。店主を全て支える仕事ということでOK。気持ちが楽なのだから、まずは本当に細かいことを覚えながら、出来るようになることだ。

だから久々に、一回やったことのメモを取って、復習して新しいメモを作った。覚えるのが嫌じゃないのだ。結局仕事を覚えるのは体に入れることと同じで、自分が受け入れ難いものは覚えにくい。嫌いなものを体に入れたくない。拒否してしまう。当然だ。好きだったり、知りたくてワクワクしていること、興味があることは自然と記憶に残り、どんどん入って来る。好きなものを仕事にするというのはこういうことを言うのかもなぁ。出来なかったらどうしよう・・・という不安さえ過る隙間がない。おお、そうなのか~とただ楽しんでいる。また出勤日には店主から質問票を作っておいてくれ、と言われているから、それまでに気が付いたことをまたメモすることにしているが、昨日からアレコレ書いている。こんなに自分にやる気ってあったんだねぇ。

最後に書き加えておきたい。こうやってケーキ屋の店主を手伝う仕事に就いて思ったのだが、自分にちょうどいい仕事の量というのがあるのだなぁということ。今回の仕事のように短時間で、週に一回。金額はお小遣い程度だ。それでも仕事は仕事であって、覚えることもあるし、費やされる時間や、自分の中に入って来る新しい概念や技術、新しい人付き合いもある。小さな仕事であったとしても、今の生活を大きく変えてしまって自分が何かに蝕まれるほど時間を割くことは嫌だなと思うが、今回は全く嫌だとは感じていない。まぁ、好きな場所や人、ものだったというのは確かに大きいが、単純にそれに割く時間や内容というのは適量というものがあるなぁと思う。仕事に関係する○○しなきゃならない、的なものが仕事していない日の中に生まれて来ることがあったら、きっと拘束されている時間以上に拘束されているのだと思う。それは時間以上に働いていることになる。何だかもったいないなぁと思うのだ。

その仕事を考えていることが好きでたまらない!という状態ならまだしも、今は休みなんだから放って置いてくれ~と思うような感じで、嫌だと思っているのに抱えて過ごさなくてはならないなら、キャパオーバーか、もしくはその仕事に自分は向いていないかもしれないなと思う。若い頃から当然のように仕事をするのを日常にしている人からすると理解出来ないことかもしれないが、今やっている生活の主体になるものが大きく変化してしまう程の仕事になってしまうと、それは仕事中心の生き方であって、自分の生き方ではなくなる。何事も自分の生活のバランスが大事。今の仕事はちょうどいいなぁ。

では今日はこのへんで。