するすると履歴書が書けた。恐ろしい。自分でも驚いている。一度も間違わずに履歴書を書けたことなど今まで無いのに。家族が置いて行ったが、もう履歴書には用は無いなと捨ててしまったはずの履歴書の残りが出て来て、なんと証明書に使った残りの写真まで発見してしまったがゆえに、ケーキを夕方買いに行こうと思ったついでだ、とりあえず書くかと思って書いてみた次第である。今までどんなに一生懸命書いても、必ずと言っていいほど文字を書き損じてしまうことしかない、そんな履歴書書き。なのに間違わず書けてしまった。店主が雇う雇わないのは関係なく自分が仕事について真面目に考えてしまったこともあって、書き出して、終えてしまった。大事な友に手紙を書くように、一文字ずつ、気持ちをわかってもらおうという感じで書いていた。本来きっと、そういうものなのだろうなぁ。
先日ブログに書いたように、一度書いてはいたのだ。内容を考えて、ちょっと段が足りないな~と思って、手を加えたくなったり、表現を変えたくなったところがあった。だから、今回書いたのは、言わば清書のようなものかもしれない。だとしても、こんなにも丁寧に間違わずに書けたのは初めてで、自分の思いが深いのかもしれないと思った。働くってなんだろう。書いて身支度をして、ケーキ屋に向かった。
夕方の閉店に近い時間帯。自分の食べたかったマロンのパイはギリギリ残っていた。注文して包んでお会計をしている最中に、他のお客さんが入って来た。話すタイミングを逃したな~。どうしようか?と思っていながら、「ちょっとお話があるんですが」という言葉が自分の口から勝手に出ていた。「ああ、そうですか。では少しお待ちいただけます?」と普段しない口調とトーンでお互い何だか改まった感じで会話した。じゃあ、ケーキ冷蔵しておきますねと言った後、店主が他のお客さんの接客している間、店内で自分はカタログや店に関わる出版物を見ながら待っていた。なぜか普段出会うことがないお客さんが続き、結局閉店時間まで待ってから話をし始める。
お店に誘ってもらっていたことを話し始めると、店主の方から「イヤ~、あんな話をしてしまって、もし無理させたらどうしようと考えちゃって…」と言って来た。あの後も自分との会話を思い出して自分が考えていたように、店主も仕事に誘ったことについて考えてしまっていたようだ。自分としては、素性もわからない見たまんまの自分を誘ってくれていたことから、自分のことを知ってもらった上で良ければ手伝おうかと思っていると告げながら、履歴書を渡したら、少々驚いた様子だったが「もう、見ちゃっていいですか?」と早速見ながら話は続く。
渡したら少し考えてもらうだけでいいと思っていたので、自分は面接みたいなことをするつもりもなかったが、こんなに時間を割いてくれるとは思わなかった。少し改まった様子で店主がやっている厳しい仕事の内容や思いに始まって、繁忙期の短期間だったら厨房を手伝ってくれと考えていたのだが、長く勤めるなら販売も一通り全体のことが出来て欲しいと話してくれた。店の課題やお金の苦労、結局一時間ほど話をして、店主から「って、こんな感じでも、もし良かったら。」デへへと笑って、よろしくお願いしますということで今後手伝うことになった。
自分としては努めて行きたい、と思う気持ちくらいしかない。突然の話でもあったので(そりゃそうだ)、雇用契約の際に渡している書類の準備もなかったから、後日また来てくれと連絡が来た。店主は本当にいつ寝ているのだろう?生きていること=仕事をしている時間で、ただひたすら「店をやりたい」と言う気持ちで続けている。店の立ち上げまでも「お前には無理だ」「やめた方がいい」と家族や周りから言われっ放しで誰も協力してくれなかったとのこと。でもとにかく一人でもやるのだ、という気力だけでここまで来たようだ。
いつも店主の優し気な気配りやどんなに疲れていても真っ当で揺らがない筋の通った感じを少しは知っているから、職人気質にありがちないきなり「怒鳴る」ようなことはやらないということも想像がつく。どうしたら理解が深まるか、どうしたら動けるようになるか、どうしたら失敗が減るか等、人を見ながら試行錯誤していて、けして考えることですら本人任せにしていないんだろうなぁ。隅から隅まで全てに店主のこだわりが詰まっているように見える。優しさと強さも光った、私の大切なお店だ。
だから、自分がいつもなら近寄らないでいるようなそんな大変シビアな職場になぜ踏み込んで行くことになったのだろう。思いがけず、仕事自体する気の無かった自分がこんなに引っ張られてしまったのは、たぶん店主の持つ熱意に引かれたのだな。負担にしているものや犠牲にしているものはたくさんあることは見えているし、聞いている。私だったら選ばないなと思う人生を進んでいる店主。
恐らく、この店で働きたいと思っても生活が出来ないから実際には辞める人もいるだろう。賃金は安く、パートタイムで働く人も、たくさん働きたくても店主の意思で制限がかかる。店主が働いているスタッフの様子を把握して業務も時間帯も決めている。当然と言えば当然だが、失敗や技量が売り上げに響くので、クビにはしないが減らすのは顕著だ。週〇日で〇時間働きたい、というような希望に沿う働き方は出来ないと思った方がいい。人は集中が切れて来るとダメだなと思うらしく、一日3時間単位で雇っている。もちろん繁忙期はそれより長くなることもあるが、店主が考える要る要らないは明確だ。
自分も毎日長時間というのは体力的に無理だろうと思っていたので、ちょうど良かった。心配は無用だった。まぁまだスタートもしていないから、これからどうなることやら。こんな自分が働いていて大丈夫だろうか?などと店主を勘繰る必要も心配もないな。要らないと思ったら減らされるだけだ。何も気にしなくていいな。スタッフになると〇%引きだよ!と帰り際に喜々と笑って手を振りながら店主が言っていたなぁ。それだけでも恩恵を受ける。これはかなり自分にとって美味しい仕事じゃないだろうか。
では今日はこのへんで。